小さな箱
ようこそ砂漠cafeへ
静天凪(せいてんなぎ)です。
今日はちょっとしたトラブルがありました。
cafeには何人かお客さんがいらっしゃいました。
その中にcafeの遥か東に広がるメトロポリスからのお客さんとその彼女らしき女性が座っていました。
男性は終始携帯電話を操作していました。女性は携帯電話を出すことなく彼にむかって時に真剣に、時に優しい微笑を浮かべて話しかけていました。
女性「そうは思わない?」
男性「・・・え?ああ。そうだね」
女性「ゲーム?そんなに面白いの?」
男性「まあ・・・うん。お、ラッキー!」
女性「ポイント・・ゲットしたんだ・・・」
その時突然女性が立ち上がり、ポケットから自分の携帯電話を取り出しました。
大きな音がして携帯電話が地面に叩きつけられました。
女性はまだ微笑を浮かべています。
女性「私はもうこんなものは要らないわ。自分の目で見て、自分の肌で感じて、自分の鼻で嗅いで、自分の頭で考える人生に戻るの」
男性「あれ、なんか落ちた音がしたよ。携帯落としたんじゃない?壊れてないかな」
女性「落としたんじゃなくて、叩きつけたのよ。壊すために。でもなかなか頑丈に出来てるわね。ひびさえ入ってないわ」
男性「ちょっとまって。うわ、ラスボスでてきた」
女性「マスター、熱い飲み物あるかしら?」
女性「この人はいまだに何もわかってないの。とてもかわいそうな人なのよ。このちっちゃな薄っぺらい箱に支配される前は、本当に自由で生き生きと生きていたのに・・今じゃ箱ばかり覗いて、貴重な時間を奪われていることにさえ気づいてないの」
私「どうぞ」
女性「せっかく煎れていただいた珈琲がもったいないけど、ごめんね。床は私が掃除するから」
私「構わないよ」
おもむろに女性は床に転がっている携帯電話に珈琲をかけはじめました。
他のお客さんも何事かと見ています。
男性「うわ!何してるの?そんな事したら使えなくなるじゃないか。もったいない!携帯電話がいくらするのか知ってるの?」
突然私の横に幽霊猫が現れました。
いつもながら突然の出現に私もはっと驚いてしまいました。
猫「彼女は新しい旅に出るんだわ」
私「旅に?何処か遠くに行くのかな」
猫「違う。今までの生活と表向きは同じよ。〝クジラたちの歌う海から来た旅人〟静天凪ならわかるはず」
私「彼は彼女の行動の意味がわかるだろうか?」
猫「メトロポリスにどっぷり浸かっているように見えるわね。わかるまでにはまだ随分時間がかかるでしょうね」
私「いつものヘネシーでいい?」
猫「はい。いつものヘネシーで。彼女の新しい旅に乾杯しましょう。わたしのおごりよ」
私「ありがとう」
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