ミイラ男
ようこそ砂漠cafeへ
静天凪(せいてんなぎ)です。
今日はいつになく鴉が真剣に連れと話しています。
連れは全身包帯で巻かれた、いわゆる〝ミイラ男〟の格好をしています。
ミイラ男「君はいいな。鴉になれて」
鴉「とりあえず、〝脱走〟おめでとう」
ミイラ男「俺は二度とあそこへは戻らんよ」
鴉「体の傷は癒えたんだろ?」
ミイラ男「ああ。すっかりな。だが連中は今度は〝こころの傷を治療せねばならん〟て言うのさ」
鴉「で、脱走してきた訳だ」
ミイラ男「俺は病気らしい」
鴉「本当のこころは傷つかない。連中の言ってるのはこころの外側のことだろ」
ミイラ男「俺は病気で、薬が必要ってさ。こころのな」
鴉「君は病気なんかじゃない。この雄大な空を自由に飛び回る偉大なるワタリガラスの名にかけて断言する」
鴉「まあ飲め」
ミイラ男「包帯が邪魔して飲めない」
鴉「顔の包帯を取ってやろう。は!傷一つないじゃないか。なあ、マスターも何か言ってやってくれ」
私「そう。確かに君は病気なんかじゃない。クジラが歌いイルカ達が笑う海から旅をしてきた画家、静天凪の名にかけて断言するよ」
ミイラ男「だが君は空をとべる。そして君は絵が描ける」
鴉「君が空を飛びたいなら飛べる。君は何がしたい?したいことをただすればいいだけさ」
私「絵が描きたければ教えてあげよう。簡単なことさ。ドライマルティーニをどうぞ」
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ミイラ男「ありがとう。そんな事言われたことないのでうれしいよ」
鴉「しかし、よくもまあ、こんなにグルグル巻きにされたもんだな。外すのが手間だ」
鴉「おい。マスター、これを見てくれ!立派な羽根がはえてる!」
私「雉のような綺麗な色だ」
鴉「飛べるよ。お前も。今から一緒に飛ぼうじゃないか。まだ陽は落ちてないし」
ミイラ男改め雉男「俺も飛べるのか?本当に?」
鴉「連中に何て言われたのか知らんが、自分を卑下するのはもうやめろ。俺が砂漠の上の飛び方を教えてあげよう。ついてきな。いいかい、砂漠の夕陽は泣けるぐらい綺麗だぞ」
私「おもう存分に飛んでくるといい。夜になっても構わないじゃないか。星空も本当に美しいぜ」
こうして二人の男、いや二羽の鳥は飛んでいきました。