大きな箱
ようこそ砂漠cafeへ
静天凪(せいてんなぎ)です。
今日は珍しく鴉が人間の姿のまま来ました。
私「いらっしゃい。おや?今日はシフトチェンジしてないね。いつもなら羽根がついたままだったり、顔だけ鴉だったりなのに」
鴉「メトロポリスで生活してると自由が奪われてくるのさ」
私「自由が?」
鴉「シフトチェンジするには夢が必要なんだ。俺の場合は〝大空を自由に飛んで、美しい景色に融けるぞ〟っていう夢だな」
私「素晴らしい夢だ」
鴉「夢が俺をシフトチェンジさせる。その夢を育てるのが自由な日常生活だ」
私「メトロポリスはそれを制限する?」
鴉「ああ。最近特にひどい。だからパワーダウンさ。空を飛ぶこともできず、電車にのって来た。駅からは歩きだ」
私「悪いな。辺鄙な場所で」
鴉「電車じゃあ携帯電話をカチカチやりながら、大股開きでシルバーシートを占拠している者や、イヤホンのボリュームを下げようともしない人間や、混んでいようがお構いなしでリュックサックを背負ってうろちょろする者ばかりだった」
私「相変わらず狂っているね」
鴉「俺には最近、まともに夢をかたる事ができる相手さえいないのさ」
私「家族は?」
鴉「大きな箱ばかり、たわけた顔をして眺めている。箱の中の連中の言うことに一喜一憂したり、笑ったり、頷いたりしている」
私「箱の中の連中?ああ。あのやたらテンションの高い、無責任な偽善者たちか。連中は話がうまいからな」
鴉「まあそういうことだ。俺はいっさい相手にしてないがね。。。とりあえずジャズでも聴こうかな。それと今日はむしゃくしゃするから酒を飲もう。カクテルをなにかつくってくれ」
私「オーティスレディングをかけてあげよう。そしてギムレットを」
鴉「助かるよ。ギムレットとオーティスか。いいな。羽根が生えるかもな」
私「連中の偽善はここには入ってこれないよ。それにしても君はあんなメトロポリスにいて、よく鴉になれたものだな。感心するよ」
鴉「ここは最後のボーダーラインかもしれないな。ああアルコールと音楽が沁みる」
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