鴉の憂鬱
ようこそ砂漠cafeへ
静天凪(せいてんなぎ)です
鴉が人間の姿でカウンターに座りました
私「あれ?どうしたの?サラリーマンの姿になんかなって」
鴉「ひとのせいにはしたくないけど、物事を面白くなくさせる人間が多くてな」
私「すっかりメトロポリタンの姿じゃないか。今日は空を飛んでこなかったのかい?」
鴉「メトロポリスから電車に乗って、駅からはここまで歩いて来た」
私「遠かったろ?なんにする?」
鴉「バーボン」
私「見る影もないね。さあ、ジャックダニエルだ」
鴉「いい香りだ」
私「で、メトロポリスの何が君をそこまで追い詰めたんだい?」
鴉「喧騒、嫌味、無機質、人工的時間の追込み、情のない大声、会社というものの社会的理念エトセトラ、エトセトラ・・」
私「それが君を飛べなくさせていると?君はそれをどうするつもりだい?」
鴉「疲れちまってるのさ。とにかく回復させないとこのままメトロポリス人生に捕まってしまう」
私「二重生活だと思っているのかい?」
鴉「ここはボーダーラインだ」
私「確かに見てくれはな。だが二重生活なんか幻想だよ。ワタリガラスとして自由に大空を飛ぶ君が本物さ」
鴉「連中の吐く言葉や、まきちらす騒音や、決めつける規制、嫌味な態度は俺を憂鬱にさせる」
私「だが君は今ここに来ている。ぺしゃんこにならずにな」
鴉「今ここにいる俺はメインの俺か?」
私「当たり前だ。傷つき疲れてはいるが君は必ず飛べる。連中は一見まっとうな事を並べ立てるが飛べない」
鴉「長いこと空を見上げていなかった。そんな余裕さえなかった」
私「見上げてみろよ。それこそが君だ。なにが経営規範だ。なにが事務効率だ。なにが仲良しグループだ。君はそちら側じゃない。飛び、自由を満喫し、そこからなにがしかを創造しシェアする。それが君だろ」
鴉「ああその通りさ。ありがとう。」
私「考えてみろよ。君は飛べるんだぜ。実際今まで何度も飛んだだろ。しかし連中は君のように飛べない」
鴉「忘れていたよ。俺は飛べるんだった。なあ、今日の空は晴れていたかな?」
私「晴天さ。空はいつ何時でも君を迎え入れてくれる。そんな事知ってるだろ」
鴉「いろいろな同調圧力がメトロポリスという不健康な群れの集合体の中で手を変え品を変えて俺に強要してくる。くだらない。もう一杯上質な液体をくれ」
鴉「なあ、自然は俺を裏切らないよな」
私「ああ。決して裏切らないよ。ほらそこからちょつと外に出て夜空をみてごらん。わかるから」