詩人
ようこそ砂漠cafeへ
静天凪(せいてんなぎ)です。
今晩は売れない詩人のお客さんが幽霊猫と一緒に話しこんでいます。
詩人「どうして俺の詩は売れないんだろうな」
猫「ていうか、あなたわたしと違和感なく話している時点で充分詩人だわよ」
詩人「何故?君は普通の猫じゃないか」
猫「わたしは幽霊猫。突然現れてヘネシーを注文し、ボブマーレイの音楽をかけてもらうの」
へネシー V.S(ヘネシーV.S ヘネシー VS ヘネシーVS) 40度 箱付 700ml 正規 価格:2,967円 |
【送料無料】 Bob Marley&The Wailers ボブマーリィ&ザウェイラーズ / Rastaman Vibraton 21 <紙ジャケット> 【SHM-CD】 価格:3,663円 |
詩人「普通じゃないか」
猫「あなたは普通に思うでしょうけど、世間、特にメトロポリタンにとっては理解不能なのよ」
私「なにせ、我々は猫と喋っているわけだし」
猫「しかもわたしは幽霊猫だしね」
詩人「ふーん。そうか」
私「よければ君のそこに持っている新作を読ませてくれないか?」
詩人「売れるようにアドバイスをたのむよ」
私「どれどれ …金色の太陽が沈むとき…」
猫「違うわ。そんな読み方じゃない。こうよ
傷だらけの赤身を晒し
鮭の群れは
あるものは銀色の腹を水面に出し
あるものは所々残った皮が赤い胴を痛々しく強調させながら
もはやひれを動かすこともなく
ごつごつとした大きな丸い石に
頭をぶつけたり体をぶつけながら流されてゆく
彼らの生涯の一代イベント〝産卵〟はおわった
その屍は悲愴だが
愚かではない
その屍は凄絶だが
後悔はどこにもない
だがメトロポリタンよ
君たちはなにをそんなに慌てて通勤の群れに流されるのか
なにをそんなに必死に通学の群れに流されるのか
花を観る余裕もなく
空を見上げマスクを外して深呼吸する余裕もなく
小さな薄っぺらい箱を四六時中持ち歩き
まるで仕事のように顔をうずめてカチカチカチカチ
俯きながら無表情に自分勝手に傍若無人にあるいてゆく
本職が終わり家に帰ってもカチカチカチカチ
ついでに大きな箱まで電源オン
その箱からは
まるで何でも知っているかのような傲慢高慢な連中の声高な声や
真面目に生きているひとをバカにする嗤い声がけたたましくひびく
メトロポリタンよ君たちは思考を停止して
相変わらず痴呆のように何もせず眺めている
カチカチカチカチしながら
何でもかんでも受け入れる
偉い人が言っているから?
面白い人が言っているから?
善人に見える人が言っているから?
人気者が言っているから?
君たちのゆく川は
鮭の産卵場所とおなじところへ行けるのか
まさか!
そんな高貴なところへはゆけない
鮭のように悲愴ではないだろう
表向きは!
だがわたし〝詩人〟という絶滅危惧種からみればあまりにも悲惨だ
‥‥」
私「君、メトロポリタンがこれを受け入れるとでも?」
猫「でも面白いかもね。汚れた洗濯物のなかに洗剤をほうりこむのって快感だし」
私「詩人君がより洗練された洗剤になるようにヘネシーをおごってやれば?」
猫「そうね。ヘネシー、飲む?」
詩人「うん。ありがとう」
私「ついでに俺にも」
価格:2,750円 |