異邦人
ようこそ砂漠cafeへ
静天凪です。
底知れず静かな夜でした。
お客さんは数人来てくれてましたが、
やがてみな帰り
とても静かな
今思うと異常なまでに静かな時が過ぎてゆきました。
ふと、ドアに目をやるといつの間にか全く気配のない若い男女が立っていました。
私「いらっしゃい」
男「このあたりは家がありませんね」
私「街からはかなり離れてるけど、砂漠のカフェってのも面白いでしょ?」
女「いい感じ」
私「どちらから?」
男「この人が寄ってみたいって言うので・・・この先に乗り物を停めたのですが、よかったかな」
女「わたしたちはずっと遠いところから来ました」
私「そんな遠いところから来て、わたしの店に立ち寄ってくれてありがとう。何もない砂漠なんで何処に停めても大丈夫だよ」
男「まるで○#△みたいな砂漠だ」
女「美しいわね」
私「え?どこって?」
男「ごめんなさい。私たちの国の言葉なので」
私「聞いたことがない言葉だね。まるでこの地球上の言葉じゃないみたいなひびきだ。飲み物は何に?」
女「お酒ってどんな味だろう?ここでなら試せるかも」
男「そうだね。なにか飲んでみようか」
私「運転して来たなら、運転手はお酒はダメだよ。酔うと危険だから」
女「酔う?ああ、意識が朦朧となるってことね。大丈夫。私たちの乗り物は頭じゃなく、こころで出来てるから」
男「ハートが物質化した乗り物って意味ですよ」
私「なんだかよくわからないけど、謎めいた男女にはとりあえず珈琲をおすすめするよ」
女「珈琲?ちょっと待って。調べるから」
男「知ってるよ。カフェインが入った、ポリフェノールの液体」
女「面白いわね。この携帯にのってる黒っぽい飲み物でしょ。それでもいいわ」
私「どうぞ。これがいわゆる珈琲ってやつだよ」
女「うわ。苦いけどおいしい」
男「本当だ。これが珈琲か」
私「演技じゃないみたいだね。旅の途中かい?」
女「これから私たちの国に帰る途中なんです」
私「珈琲でそれだけ喜んでくれたら、わたしも嬉しいよ。よければ珈琲豆、持って帰っていいよ」
男「豆だ。でもどうやって液体にするんだろ」
女「待って。調べるから」
男「そろそろ時間だ。帰らないと」
女「豆ありがとうございます」
男「ありがとうございました」
私「君たち、面白いね。気をつけて帰ってね」
価格:2,499円 |
他にお客さんもいないので、ドアの外まで出て見送ると
ちょっと離れたところに、シルクハットのような形をした奇妙な乗り物が停まっていました。
四輪駆動の自動車と同じくらいの大きさです。
二人はいそいそとそこまで歩いていき、乗り込む前にこちらに手を振って挨拶しました。
乗り込むとそのシルクハットはブルーやオレンジ色の光を四方に放ちながら
物凄いスピードで満天の星空に急上昇し、飛び去っていきました。
私「宇宙のひとたちだったんだ・・ それにしても美しい乗り物だったな」